今でも思い出す光景があります。
それは、5歳くらいの女の子を連れた30代くらいの男性が、マクドナルドのカウンターで大声でわめき散らしている光景です。
どうやらカウンターで長らく待たされたことが原因だったようですが、その男性は恰幅も大きく言葉も荒く、怒り心頭で喚く様にはお店にいる誰もが怯えてしまうような凶暴さがありました。
それは小さい子供を横に連れた父親の行動とは、とても思えない常軌を逸した行動でした。
一見、その彼は「強さ」を態度で示し、誰もがその強さに脅かされてしまような勢いがありましたが、それは真の強さとは正反対のものであると思ったのです。
表面的に攻撃的な人は、一見強く見えます。
でも本当に強い人は、周りの人間を不用意に傷つけたりしないものです。
もちろん誰でも頭に血が上り、普段は取らないような行動や言動をとってしまうことがあるものです。
特に自分や他者が蔑ろにされた時には、正当な扱いを主張する権利は誰にでもあるものです。
でも、そういう理由もなしに、見境いなく怒りが勃発してしまう心理の奥には、もっと深い個人的な理由が往往にして存在しています。
それは子供時代に親や周りの大人から蔑ろにされてきた体験であったり、友人に受け入れてもらえなかった寂しさであったり、周りから理解してもらえない辛さを繰り返し体験してきたり。。。
心に完全に癒えない傷を抱えたままでいると、ちょっとした出来事が心の痛みを刺激する原因になってしまいがちです。
そして、感情に自身の行動をコントロールされてしまうということが頻繁に起きがちになります。
自動的に沸き起こる感情をコントロールすることは、とても難しいことです。
私たちは「痛み」を伴う感情に対して、それを無視しようと頑張ったり、遠ざけようとしたり、逆にからめ取られてしまったり、もしくはポジティブ思考で撃退しようとあがいてしまいがちです。
そしてしばらくすると、その努力は気力とエネルギーは消耗するばかりで、効果がないことに気づきます。
では、辛い感情に対して、どう対処すればよいのでしょうか?
Acceptance Commitment Therapy (ACT) アクセプタンス&コミットメントセラピーという心理療法では、以下の3つのステップを薦めています。
1、感情のあるがままを観察する
2、その感情にレーベル(名前)をつける
3、感情をニュートラル化する
例えば、人間関係がうまくいかずに深い寂しさを感じていたら、心に空洞が空いたような感覚を感じるかもしれません。
ステップ1と2では、この痛みや不快感から逃れずにあるがままを感じて、その気持ちや感覚を表現する名前をつけてあげます。
例えば、この場合は「黒い穴に吸い込まれるような寂しさ」というレーベルをつけることができます。
このステップ1と2を経た段階で、あなたの心はすでに自分の感情から適切な距離を置くことができています。
なので、自分の感情に呑まれたり、それから必死に逃れようとするこれまでの習慣から、すでに脱却しています。
ステップ3では、その感情が木の葉や雲になって、川や空を自然に漂って流れていく様をイメージします。
実際に、感情に自動的に反応せずに、ただ観察していると、時の流れと共にそれらは自然に流れていくものです。
そして、感情自体には実際に自分に害を及ぼしたり、自身を傷つける力がないことに気づくのです。
もちろん、この感情に対するアプローチはすぐにマスターできるものではなく、繰り返しの練習が必要です。
でも一度でもこれを試してみると、感情に対してこれまでとは異なるアプローチが存在することが理解できます。
そして、練習を重ねる度に、次第にこれまでのような負のスパイラルに容易に陥らない自分を発見していくはずです。
長年かけて身につけたきた心の習慣を変えるには、それ相応の努力(&失敗の経験も!)が必要です。
でも、その努力こそが自分に真の強さと幸せをもたらしてくれるパワフルな心の強さを育てていきます。
感情に呑まれずに生きていくための心の筋肉。
しっかり意識して、少しずつでも鍛えていきたいものですね。
山口まみ拝
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